昔よりはマシになったとはいえ、今でも転勤はほぼ断れないというのが今のサラリーマン事情。
転勤がありえる会社に勤めている多くのサラリーマンは、『転勤アリ』ということに納得して就職しているはずなので、辞令に従うのは仕方のないこと。
そもそも転勤は、会社・本人にとって仕事的にポジティブな意味で運用されているものなので、よほどのことがない限り拒否することはできないですよね。
とはいえ、就職時と転勤辞令が下る時とでは状況が違うことも多いはず。
小さな子供がいたり、親が病気になっていたり。
そんな時でも、サラリーマンは転勤を拒否できないのか?
そして、拒否できるならばするべきなのか?
そのあたりについて、僕の周囲の実例やネット上の意見などを踏まえて考察してみました。
社員を転勤させる意味
まず、自社の社員を転勤させる大きな目的は、大別すると以下の3つ。
■適材適所によって各部署を強化するため
■いろいろな仕事を経験させて社員を成長させるため
■懲戒的なもの
上記のように、主に「会社組織全体や社員本人にとってプラスになる」と考えられて行われるのが転勤。
懲戒的なものというのは、例えばセクハラをしたような社員。
その罰として他部署へ飛ばされる、という形になりますが、これも考えようによっては『会社組織全体の公益を図る為』とも言えますよね。
セクハラをした人間をそのまま同じ部署に置いておくと周囲も仕事がやりにくいだろうし、本人も居づらいはず。
多少降格しようが、他部署へ飛ばすことで、ゼロからのスタートだと本人も反省して割り切り、奮起できるかもしれない。
そして元の部署においても、セクハラ社員がいなくなったことで働きやすい環境ができるかもしれない。
このように、組織全体として考えれば懲戒的な転勤ですら会社組織に有益なものとなる可能性があるわけです。
つまりどんな転勤であろうと、『会社』にとってはプラスに働きやすいものとも言えます。
そこへ、個人の成長や働きやすさなども加わってくるので、基本は拒否できるものでもないし、するべきものでもないと考えられています。
どうしても嫌ならば、転勤を拒否できる?
しかし近年、家庭の事情などでどうしても転勤したくない、という場合も増えてきています。
「家を買ったばかりだから」「慣れた土地から離れるのは寂しいから」といった理由はさすがに通用しないでしょうが、以下のような『重大な事由』は考慮されることも多い模様。
■嫌がらせ(ハラスメント)的な理由での転勤
■介護の必要のある親がいる
■本人や家族の深刻な病気
もちろんそれぞれ『程度の問題』は出てきます。
本当にハラスメント的な転勤なのか。
親の介護ならば、介護レベルはいくつなのか。
本人や家族の病気ならば、どれくらい深刻な病気なのか。
こういった重大な事由において『転勤を拒否するに足るレベル』と判断されれば、かなりの確率で拒否することは可能でしょう。
その他、『子供の学校関連』という拒否理由も多いようですが、これは認められるかどうか微妙なところ。
なぜならば、これを認めてしまうとかなり広範囲に渡って転勤拒否の理由ができてしまうかもしれないからです。
「ウチの子は受験するので、受験に集中する2年間は猶予して欲しい」
「あと1年で小学校を卒業するので、卒業するまで待って欲しい」
「来年、子供の部活が全国大会に行けるかもしれないので、そこまで待って欲しい」
・・・といったように、いくらでも拒否する理由が生まれてしまいます。
最も転勤辞令が出やすい年代は30~40代。
30~40代と言えば、子供がいる場合は小~中学生くらいであることが多いですよね。
そしてこれくらいの年代の子供は、親しい友人や慣れた遊び場から引き離されてしまう『親の転勤』を嫌う場合がほとんど。
余談になりますが・・・
実際、僕もそうでした。
小学校5年生になったばかりの時にいきなり父親の転勤が決まり、千葉から大阪へ転校することなり・・・
あの時は、三日三晩泣き暮らしたことを今でも覚えています。
まだたった10年程度の人生でしたが、こんなに悲しい思いをしたことはありませんでした。
今でもトラウマになっているほど。
だから僕は、「自分に子供が出来たら絶対にあの地獄のような悲しい思いはさせない」と子供の頃に誓いました。
その誓いが、転勤とは無縁な『在宅自営業』という今の道を選ぶ一つのきっかけにもなっています。
閑話休題。
まとめると。
最初に列挙した3つの重大自由(ハラスメント・親の介護・家族の病気)ならば正当に転勤を拒否できる可能性は高いですが、子供の進学関連が転勤拒否理由になるかどうかは会社によって対応が変わってくる、ということ。
個人的には、子供の一生を左右するかもしれない時期なのだし、会社側も出来る限りの配慮をすべきだと思います。
「そんなことを言っていたら組織運営など立ち行かなくなる!」という経営側の気持ちも非常によく理解できますが、それを鑑みつつも、可能な限り労働者に寄り添っていくべきでしょう。
会社と社員が長く良好な関係を保つためにも。
出世を諦めるならば転勤を断るのもアリ
なお、正当に転勤を拒否できたとしても問題は残ります。
それは『出世』。
サラリーマンにとっては、非常に大事なファクターでしょう。
転勤は、その社員を成長させる意味合いが強いもの。
会社としても、転勤にかかる引っ越し代や新天地での家賃手当など、経費がかかるのです。
そんな経費をかけてでも成長させようとする、それが転勤。
そんな転勤を、いかなる理由があろうとも、結果的に拒否してしまったということになれば、当然評価は下がることが多いでしょう。
「親の介護なら仕方がないだろう!」
「家族が病気なんだ! それで評価が下がるなんてあっちゃならない!」
こういった意見も正論です。
その通りだと思います。
しかし、会社側の人間になって考えてみてください。
そんな状況だろうと、転勤に従う人は従います。
会社の命令なのだから絶対だ、と考えてその通りにする人も多いです。
【いかに正論だろうが結果として会社の意思に反した人】
と、
【辛い状況だろうが何も言わず会社の意思に従って行動した人】
がいた場合。
「どちらが正しいか」というのは全く別の問題として、会社はどちらの人間を信用するでしょうかか?
答えは言わずもがな、ですよね。
なので未だに、いかなる理由があろうとも「転勤を断れば出世に響く」ということはあると思います。
断る場合は、今後の生き方についてじっくり考えて、ある程度の覚悟を持って断った方が良いでしょう。
事実上の『終身雇用崩壊』となった今
転勤がある会社に就職した以上、できる限り組織のことを優先して考え、辞令が下りればそれに従う必要があるとは思います。
なんだかんだで、仕事を与えてくれて生活の土台となる給料を得られる場を提供してくれている組織、それが会社なのですから。
最大限の感謝と貢献をすべきでしょう。
しかし、時代は変わってきました。
終身雇用の崩壊を経済界のトップが明言するほどにまでなった今の環境を考慮すると、どうしても従いたくない命令に対してならば断るというのも一つの手段なのかもしれません。
そこまで無理に会社にしがみつく必要もないのかなと。
ただその場合は、『それなりの覚悟』があるかどうかが非常に大事になってきますが。
転勤を拒否するか否か。
この問いは、
① 今の会社に頼らない生き方を覚悟する
② 可能な限り今の会社に尽くし、経済的な面も保証してもらう
・・・の、どちらの選択肢を選ぶか、という問いに近いのかもしれません。
リスクはあるが、リベラル(自由)さを優先するか。
保守的ではあるが、比較的安定な道を優先するか。
生き方は、誰しも好きに選べます。
各々が、リスクとリターンを考慮しつつ好きに選べばよいと思います。
出世がすべてではないです。
「経済的自由に縛られて、時間的自由を放棄する」ということを嫌う人だっているはず。
どの道を選ぼうが、それは自由です。
是非、ご自身にとって「トータルで考えた場合のベストな答え」を選択していただければと。
なお、転勤に関する疑問やもめ事は少なくないです。
そのあたりについては、以下の記事についてまとめているので、興味があれば是非!

