喧嘩商売/喧嘩稼業の人気キャラである『入江文学』。
一子相伝の古武術『富田流』の使い手で、主人公である佐藤十兵衛の師匠でもあります。
ファンの中では、
喧嘩商売は、入江文学が登場してから面白くなってきた
という意見も非常に多いです。
僕も全くの同意見!
入江文学登場以前
正直、入江文学が出てくるまでは今までの木多先生の作品の流れを踏襲していました。
軸となるテーマはあるものの(喧嘩商売の場合は『格闘・喧嘩』)、基本的にはパロディがメイン、といういつもの木多先生クオリティです。
過去の作品である『幕張』・『泣くようぐいす』でも、『野球』という軸となるテーマがありつつも、主人公たちがほとんど野球をしないという斬新なストーリー展開で読者をざわつかせました。
・・・なんて言いつつ、個人的にはこのめちゃくちゃな感じが結構好きだったんですけどね。
訴訟覚悟(?)の時事ネタ・芸能ネタのパロディや、強気で知られるジャンプの編集をイジるシーンなどなど。 矢禿・・・
なので、文さん(入江文学)が登場する8巻以前までも僕としては面白かったです。
特に工藤戦はヤバかったですし。
ところが・・・
8巻以前も充分面白いと思っていた僕でも、十兵衛が工藤に負けて、文さんの許を再び訪れたあたりからの面白さの方が圧倒的に上。
それはもう、比較にならないくらい。
文さん登場以降はストーリー展開が激変し、真面目パートが大幅に増えていったのです。
これは、今までの木多先生にはなかったパターンでした。
入江文学登場以後
元々いじめられっ子だった十兵衛は、どういう出会い方をしたかはわかりませんが、おそらく中学生あたりのタイミングで一度入江文学に弟子入りしています。
そこで喧嘩の技術を学び、持ち前の頭脳も活かしつつ、因縁があった高野照久に勝利。
しかし工藤優作相手では通用せず、あと一歩というところまで追いつめるも、結局は小便を漏らしながら命乞いをするという最悪の結末を迎えます。
この屈辱的な経験から、再び入江文学の許へ訪れ再修業を開始する十兵衛。
ここから、本格的な格闘・喧嘩マンガへ移行していきます。
その予兆は、文さん登場時に既に現れていました。
再度修行するために、いきなり文さんの許を訪れた十兵衛。
すると文さん、裏の人間との賭麻雀で4,000万円勝った直後ということで、いかにも悪そうな中国人3人に追われています。
すると、ちょっとしたおふざけパートを挟んだ直後、「喧嘩を教えてやる、とりあえずあいつらブン殴ってみろ」という指示を受ける十兵衛。
その結果・・・
(C)木多康昭 2007年/講談社 {引用:喧嘩商売8巻}
「これでもか!」というほどのドヤ顔でキメる十兵衛。
しかし、文さんの返答は・・・
(C)木多康昭 2007年/講談社 {引用:喧嘩商売8巻}
めちゃくちゃ厳しい。。。
素人目にはほぼ完ぺきなのに、実戦を極めている文さんからすれば全然だったようで、十兵衛の駄目だったところを散々指摘した後、、、
(C)木多康昭 2007年/講談社 {引用:喧嘩商売8巻}
・・・とバッサリ。
普段はおふざけキャラなのに、こと喧嘩になると一切の妥協を許さないこの姿勢も、登場直後から人気があった理由の一つでしょう。
入江文学の特徴と魅力
■一子相伝の古武術『富田流』の当代
■鬼のように喧嘩が強く、妥協しない
■父親『入江無一』が田島彬に(結果的に)殺されたことで、なんとか仇を討とうと思っている
■ゆうこりんが好き
■無職
■童貞
・・・最後の3つで一気に何かが崩れた気がしましたが、、、 まあ気にしないようにしましょう。。。
十兵衛の無職イジりと童貞イジりは面白いですし。。。
パロディパートより、文さんと十兵衛の掛け合いの方が面白いという人はきっと僕だけではないはず。。。
ちょっと茶化しましたが、『無職』・『童貞』というところも本気で魅力だと思うんですよね。
それだけ、他の事には目もくれず武術一筋で生きてきた、ということ。
父である入江無一も無職でしたし。
・・・まあ、無一は奥さんも子供(文学)もいたので、童貞ではないのですが。。。
それゆえに、あの傍若無人な佐藤十兵衛ですら文さんには一目も二目も置いており、からかうことはあるにしても、文さんが本気になるとすぐに一歩引いてしまいます。
どんな相手でも怯まず恐れずコケにする、あの十兵衛が。
そんな十兵衛に一目置かれている。
これもまた、入江文学の魅力の一つでしょう。
人気キャラとなった理由
文さんが人気キャラとなった理由についてはほぼ挙げてしまいましたが、最後に、まとめのような形で書いてみたいと思います。
入江文学登場後から本格的な格闘・喧嘩マンガへ移行した
つまるところ、これが一番の理由でしょう。
文さんが登場してから、一気に奥の深い格闘・喧嘩マンガになってきましたから。
その内容はかなりリアルで、技の再現性についても「格闘技を専門でやっている人ならば頑張ればいけるんじゃ?」と思える現実的なもの。
リアルさや再現性の高さを魅力とする同種のマンガでは、『ホーリーランド』も有名ですよね。
そして、中でも煉獄に関してはかなりの人気。
「煉獄 やってみた」
「煉獄 元ネタ」
といったワードでの検索も多いですし。
Youtubeで実際に煉獄をやってみた方や、ニコニコでボーカロイド版の煉獄動画がアップされていたりしますし。
でも正直、「これは凄い!」という煉獄動画とは出会ったことがないんですよね・・・
いろいろな動画を観ましたが。
いつか、本格的な空手家の人同士での煉獄を見てみたいと願ってやまない僕がいます。。。
とにかく強く、超実戦的
スポーツではないことはもちろん、格闘技の試合ですらなく、実戦的な『喧嘩』に焦点を当てた文さんの考え方は本当に渋いです。
十兵衛が何か意見しても、
「それだと相手が目潰しにくる」
「噛みつかれたらどうする?」
など、通常の格闘技ではありえないパターンをすぐさま提示されてしまい、偏差値75の頭脳を持つ十兵衛があっさり論破されてしまいます。
一般的な格闘技の試合の場合、『目潰し』・『金的』・『噛みつき』といった行為は全面的に禁止ですから。
それゆえ、「何でもアリの喧嘩にそんな甘っちょろい考えを持ち込むな!」という文さんの厳しい実戦へのこだわりがコアな読者に響くのでしょう。
十兵衛との絡みが面白い
木多先生の持ち味と言えば、やはりギャグパート。
喧嘩商売時代は、存分に脱線しながらその持ち味を発揮していました。
しかし、木多先生としては初めてまともにストーリーを進めていく形式となった喧嘩商売。
となると、ギャグパートをがっつり盛り込んでいくのは、どうしても邪魔になります。
・・・まあ、それに怯まずがっつりやっていらっしゃいましたが。。。
早く金田編を進めていただきたい中、佐藤萌と2ちゃんねらー的な人たちとのバトルが続いてた時にどれだけ焦らされたかっ・・・
しかし、文さんと十兵衛の掛け合いならば、本筋を進めつつ、得意のパロディを活かしたギャグも入れられる。
そう考えると、まさに一石二鳥な掛け合いに生まれ変わるわけです。
特に、十兵衛の無職イジりと童貞イジりは秀逸。
文さんの唯一の決定をビシバシと突き、その都度律儀に反応する文さんがまたたまりません。。。
あんなに強いのに・・・
喧嘩稼業の主役は入江文学か!?
さて、そんな魅力あふれる入江文学というキャラですが。
タイトルが変わって『喧嘩稼業』となった今、もはやダブル主役になったと言ってもいいと思っています。
十兵衛はおそらく、3回戦(準決勝)まで勝ち上がるでしょうが、そこで当たる文さんとは闘わないでしょう。
その理由は、以下の記事でも書いています。
[関連リンク]■喧嘩商売と喧嘩稼業の違いは主に『絵』『脱線具合』、そして・・・
となると、櫻井裕章との1回戦第3試合を勝ち上がった入江文学は、2回戦・3回戦を不戦勝で勝ち上がることになります。
※2回戦は、闘うはずの金隆山が死亡したため不戦勝確定
そして、決勝まで勝ち上がってきた相手と闘い、いよいよ因縁の田島彬と対決。
この筋書きが既定路線かなと。
その流れを助けるため、裏で十兵衛が暗躍する、という形になるのではないでしょうか。
そうなってくると、喧嘩稼業の主役は十兵衛に加えて文さんも、と言えなくもないと思います!
とはいえ、良い意味でひねくれ者な印象の木多先生。
最後まで何をやってくるかはわかりません。
いろいろなエンディングパターンがあるかとは思われますが・・・
今現在、最強の最終話は決まっていない。