将棋マンガでありながら、将棋以外の要素もふんだんに盛り込まれている『3月のライオン』。
特に、主人公『桐山零』と『川本家の面々』との繊細な人間模様が大きな見どころの一つですね。
そして、この『3月のライオン』という名前。
将棋マンガなのに、なぜこんなタイトルなのか?
パッと見では、将棋のニオイが全くしません。
『月下の棋士』や『ひらけ駒!』のように、一目で将棋絡みのマンガと分かるタイトルが多い中、なぜ・・・?という方もいらっしゃるでしょう。
もちろん、そこには意味がありました。
棋士にとって修羅の月となる『3月』
この答えは、単行本2巻の中盤にある先崎学プロのコラムの中にあります。
プロになると、『順位戦』というリーグ形式での対局が行われます。
ここで、ランダムに選ばれた10人の対戦相手と10対局を行ない、その成績によってクラスが昇格するか降格するかが決定されます。
順位戦が始まるのは6月。
そこから、月に1対局ずつ行われ、トータルで10対局行われます。
ということは・・・
最終対局となるのが3月。
最後の対局ゆえ、この3月の対局で勝てるかどうかによって、昇格するのか、降格するのか、同じクラスに残留できるのか、が決まるということも多いわけです。
つまり、棋士にとっては非常に重要となってくるのがこの3月の対局。
そんな大事な大事な3月の対局時には、多くの棋士がライオンのごとく獰猛になり、必死で勝利をもぎ取ろうと足掻くわけです。
こういったことから、このマンガのタイトルは『3月のライオン』という名前になりました。
3月のライオンのごとく足掻く棋士
実際にマンガの中でも、降格を懸けて苦しむシーンが描かれています。(これは3月の対局ではないですが・・・)
松永さんという65歳の棋士です。
(C)Chika Umino 2008/白泉社 {引用:3月のライオン2巻}
次に桐山零に負けたらC2に降級。
つまり、プロとしての最下層リーグです。
順位戦を放棄する『フリークラス』というものもありますが、やはり昇格を懸けて順位戦をこなしてこそプロ!という考えの棋士も多いのでしょう。
しかし松永さん、対局内容はボロボロ。
あの手この手で必死に足掻きますが、すべて桐山零に見透かされてしまいます。
こんな松永さんを相手に、メチャ余裕で勝ちそうになってしまう零。
「自分が勝ってしまうとこの人は終わってしまう・・・」という葛藤から、勝ちに行くかどうか若干迷うも・・・
(C)Chika Umino 2008/白泉社 {引用:3月のライオン2巻}
「わざと負けようにもそれすらすでに難しい」
と零君に言わしめるほど、それはそれはひどい対局内容。。。
最終的に、零君がガンガン攻めて決着をつけにいったところ・・・
(C)Chika Umino 2008/白泉社 {引用:3月のライオン2巻}
『投了の時の潔さ』も棋士としての重要な品格の一つなのですが、それをモノともしない実に前衛的な投了シーンを見せつけてくれました。。。
松永っ・・・・・・(←もはや呼び捨て)
実にシビアな将棋の世界
しかし、松永氏がこうなってしまうのもよくわかります。
将棋のプロになるというのは、本当に険しき道なのですから・・・
何百・何千、下手したら何万という数のプロ棋士を目指す人たちの中で、プロになれるのはわずか約160人。
将棋の世界では、四段に昇格して初めて『プロ』になります。
三段までは『奨励会』というものに属し、ここでリーグ戦を行ないながら修行を積むのです。
そして奨励会を突破すると『四段』となり、晴れて『プロ』を名乗れます。
プロは5クラスに分かれており、四段昇格時にはまずC級2組(C2)からスタート。
そして、順位戦で規定の成績を修めることで、
と昇格していきます。
ゴールであるA級は、たった10名しか存在できないという非常に狭き門。
A級棋士になるような人は、皆人智を超えた頭脳と精神力を持った神のような人でしょう・・・
なにしろ、前述の通りプロになるだけでも充分狭き門なのですから。
この時点でバケモノのように将棋が強いです。
さらに、そのトップ10ですから・・・
どれだけ凄い人たちがお分かりでしょう。。。
普通に会話とかできる自信がありません・・・
(名人がいるので、厳密には「A級以上の棋士」は11人)
クラスにって棋士の給料は全然違う
棋士たちは、なぜ命を削ってまで将棋に打ち込み、昇格しようとするのか?
もちろん、名誉やプライドのためでもあるでしょう。
しかし一番の理由は・・・
やはり『収入』です。
棋士も職業なのですから、収入を上げるための努力をするのは当然の事。
棋士の場合、滞在するクラスによって対局した際に貰えるお金が異なります。
当然、クラスが上なほど高い対局料がもらえます。
順位戦 対局料 名人 70万円 A級 40万円 B級1組 30万円 B級2組 22万円 C級1組 18万円 C級2組 10万円
少しでも高い収入を得るためには、一つでも上のクラスを目指す必要があるのです。
最後に
以上、将棋マンガなのになぜ『3月のライオン』というタイトルなのか?について綴ってみました。
3月の棋士たちは、ライオンのごとく獰猛になり、必死で勝利をもぎ取りに行く。
うーん、、、カッコいいですよね!
将棋が大好きで、棋士という職業に憧れさえ持つ僕にとっては、こんな意味が込められたタイトルと知った時は本当に痺れました。
羽海野先生、先崎先生、グッジョブっ!!!
(上から目線でスミマセン・・・)