好感度抜群だった売れっ子芸人『チュートリアルの徳井義実』氏が脱税をした、ということで炎上の真っ最中となっている本日10/25。
正確に言えば『所得隠し』と『申告漏れ』ですが、有り体に言ってしまえば『脱税』です。
サラリーマンの場合、所得税や住民税など支払うべき税金はすべて天引きされるため、自ら納税する必要はありません。
しかし我々自営業者の場合は、すべて自分から申告して自分から払いに行かないといけません。
国民の義務とはいえ、これが実に辛い・・・
通帳とにらめっこしながら時間をかけて売り上げと経費を計算し、必要な資料を集め、税理士に提出する。
そして提出後は、税理士と打ち合わせをしながら、税務処理を進めていく。
この過程が死ぬほど面倒だし、非常に時間がかかる上、それだけの労力・時間をかけた先に待っているのは「お金を支払う」という行為・・・
「こちらが何も得をしない大変な作業をした上、お金を取られる」というのは、この世で納税作業くらいのものでしょう。
例えは悪いですが、懲役だってわずかながらとはいえ収入になるのに。
好きで税金を払っている人間などまずいません。
ほとんどの人が、歯を食いしばりながら高額な税金を払い続けているのです。
払わないで済むのならば、誰だって払いたくないのですから。
しかし、重ねて言いいますが納税は国民の義務。
適切な使われ方をしていないなどの問題も多いが、どんなに不満があろうと納税するのは当たり前の事。
なのに・・・
徳井氏はやってしまいました。
絶対にやってはいけないことを・・・
なぜか「申告漏れ」よりも「所得隠し」の方が罪が重い
今回の徳井氏の脱税の件は、主に『所得隠し』と『申告漏れ』の2つ。
今回の報道で知って驚いたのが、『所得隠し(経費のごまかし)』と『申告漏れ(無申告)』の場合、所得隠し(経費のごまかし)の方が罪が重くなる、ということ。
これは今でも信じられませんね。
どう考えても、一切申告しない方が悪質に決まっているのに。
「うっかり申告するのを忘れてて・・・テヘヘ・・・」
なんて言って無税でいる方が罪が軽いというのです。
さすがに悪意のある無申告は重罪となるようですが、悪意があっての無申告かどうかなどそう簡単に証明できないですよね。
対する所得隠しは、一応申告はしっかり行なっています。
行なってはいますが、本来の経費以上の額を申請し、払う税金を抑えようという行為です。
納税額を不当に低くしようとする所得隠し。
一切の税金を払わない無申告。
普通に考えてどちらが重い罪かは一目瞭然ですが・・・現実は逆だと言うのです。
それでも申告漏れ(無申告)はシャレにならない
上記の通り、報道では無申告の方が軽いように言われていますが・・・
実際にそういうケースは少ないと思われます。
僕が、複数の税理士さんから口酸っぱく言われたのは、
「とにかく売り上げ額の漏れだけはないように」
これでした。
後で詳しく書きますが、「どこまでを経費とするかの判断」は非常に微妙なもので、もし税務調査が入った場合は、税理士と税務署が、
「これは経費にすべきか」
「経費にはできるが全部は無理。 ●割まで経費として認める」
などの話し合いが行われます。
しかし、売り上げの申告漏れがあった場合はかなりまずいことになります。
たとえうっかりミスでも、うっかりなのか悪意なのかは分からない為、基本的には言い訳無用で「悪意」と判断されてしまうのです。
「さすがにこれはうっかりミスだろう」と思われるような、よほど確かな証拠や客観的要素でもない限りアウト。
例えば、「年商1億円の会社で、1万円の申告漏れがあった」など。
年商が1億円ある中で、たった1万円の売り上げを誤魔化そうとするメリットなどほとんどなく合理性に欠けるので、これはさすがにうっかりミスだろうと推測できます。
こういった場合でない限り、申告漏れについてはほぼ間違いなく「悪質」と判断されるのが通常です。
要は、国税側の胸先三寸ということ。
国税が「この申告漏れは悪質だ」と判断すれば、罰則的な課税として最も重い「重加算税」に加え、逮捕・起訴されることも充分にありえます。
最近では、1億を超える脱税については逮捕の可能性が高く、実刑の可能性も出てくる模様。
そんな状況で、1億3800万円もの申告漏れを指摘された徳井氏が逮捕すらされなかったのは、かなりラッキーと言えます。
これは、彼が好感度&知名度の高い人気芸人だったことが影響しているのかもしれません。
今回と同額かそれ以下の脱税でも、逮捕されている人は大勢いるので。
通常の脱税は、「納税する際に何らかの方法で課税対象額を過少申告し、納める税金を低くする」というもの。
納めるべき税金の10%だったり30%だったりをチョロまかして懐に入れよう、ということを目的として行なわれます。
しかし無申告は、100%チョロまかす行為。
納税における最大最強の悪質行為だと言えます。
以前に『次長課長の河本氏』が、母親の生活保護不正受給問題で炎上したことがありましたよね。
そのバッシングは尋常ではなく、今でも尾を引き、河本氏の好感度はいまだ低いまま。
本質的には、「国のお金を不正に懐に収めた」という点で、徳井氏のやっていることは河本氏と同じか、それ以上に悪質なのです。
それぐらい、無申告というのは本当にヤバい。
ヤバすぎて、とてもじゃないが怖くて普通はできません。
「納税についての知識があまりなくて・・・」で逃げられるわけがないのですから。
それで逃げられるのならば、誰だってその言い訳で逃げます。
無申告というのは、自営業者にとってタブー極まりないものなのです。
まずいないとは思いますが、自営業者でもし無申告の人がいたら、すぐにでも納税に行くべき。
何年か分を後から申告することも一応できます。
もちろん、毎年の納税を怠っていたということで追徴課税はあるし、今後マークされやすくなるというデメリットはしっかりついてきますが、無申告のまま突っ走る方が遥かに危険だし、そもそも国民としての義務を果たせていないということは大問題なので、後からだろうと申告した方がよいと思います。
自営業者の経費計上のライン
一方で、今回徳井氏が『所得隠し』と言われている経費の部分については同情の余地があります。
ちなみにここで言う『自営業者』とは、
②個人事業主
③一人会社の代表取締役
・・・を指します。
僕の場合は「③」に当たります。
そして徳井氏も「③」です。
サラリーマンの方の場合ちょっと想像しにくいと思うのだが、「どこまでを経費とするか」という線引きは実に難しいもの。
今回の徳井氏の場合では、
「衣装代(ただし私服としても使用)」
「旅行代」
・・・など、すべてを経費として計上したとのことだが、そのほとんどが経費にならない雰囲気。
これについては、ちょっと厳しすぎると感じました。
特に旅行代。
お笑い芸人の場合、ネタになりそうな場所を選んだり、ネタになりそうな人を連れて行ったりして、その費用を全額持つ、というのが通例であるように思えます。
例として、千原ジュニア氏の場合、旅行先での出来事をテレビでネタとして話している姿をよく見かけます。
そして、その話は実に面白いもの。
それらは、旅行しなければ生まれなかった話です。
芸人は、こういった面白いフリートークをするのも仕事の一つ。
そして面白いフリートークは、行動しないと生まれにくいです。
そう考えると、旅行代については大幅に経費として認めるべきなのではないでしょうか。
その他、飲食代も、「後輩たちに奢りながら仕事の話をする」のならば、経費として認めるべきだと思います。
「衣装代」も、私服として使っていた部分もあったにせよ、按分して「半額は経費」といったやり方が妥当に思えます。
ただ今回徳井氏がミスったのは、国税が介入するところまでいってしまったところ。
無申告というありえない行動を取ってしまった以上仕方が無いのですが。。。
国税が介入したということは、脱税額が巨額かつ悪質と判断された場合に限るので、経費についての話し合いなどもほぼ不可能になってしまいます。
通常、所轄の税務署との話し合いならば、経費についてはある程度考慮されたはず。
僕の場合もそうです。
僕は自宅に仕事部屋を設けてそこで仕事をしているので、家賃の一部を経費に出来るし、光熱費の一部なども経費に出来ます。
そしてどれくらいの割合で経費にするか(=按分するか)は、税理士さんの判断。
この時、どこまでが経費になるかの判断は、プロである税理士さんにすべて丸投げするのが通常です。
税理士さんが「この形で使用しているのであれば、●割は経費になりますね」と言えば、こちらとしてはそれにただ納得し、そのまま申告書類を作成してもらいます。
税務調査が入った場合は、税理士さんが立ち会って、経費の用途や割合などについて説明。
そこで話し合った結果、税務署側で認められない経費があれば修正申告をする。
・・・と、こういった流れになります。
ちなみに、修正申告ならば何も問題はありません。
ただの「経費についての見解の相違」であって、修正されることなどごく普通にあること。
僕の経験上や聞いた話などから鑑みるに、税理士さんに任せている以上、何かあったとしてもほぼほぼ「通常の修正申告」で済みます。
税理士をつけているのに過少申告加算税や重加算税が課されるとしたら、依頼者側が税理士に無理やり不正な経費を認めさせた時くらいでしょう。
税理士自らがリスクを取って、危険な経費計上をするわけがありません。
そんなことをしても、税理士には何の得もないばかりか、自分の身まで危なくなるリスクが生まれるだけなのですから。
ハイリスクノーリターンです。
ということで、自営業者が経費を計上する際は、
「可能な限り領収書は取っておきつつも、経費として使えるかどうかは税理士に一任する」
これがベストな方法となります。
間違っても、自分で判断して勝手に経費として計上するようなことはしない方がいいでしょう。
税の知識がよほど豊富ならば別ですが、通常は複雑な税制を完璧に理解して税務署と渡り合うのは難しいので。
まさに、餅は餅屋、ですね。
徳井氏の「ルーズ」「無知」は本当か?
まず大前提として。
僕のチュートリアル徳井氏への印象は、
「カッコよくてトークも上手くて頭の回転も速い、なのに気取ったところがなく、天から二物も三物も与えられた才能溢れる人だなぁ」
といった感じで、わりと好きな芸人さんでした。
そんな僕が、自分なりに考察してみたのですが、、、
まず、『ルーズ』という部分。
ルーズな人間は、毎回しっかりと領収書をもらうということも忘れたり面倒くさがったりします。
事実、僕もわりとルーズな方の為、仕事の飲みなのに領収書をもらうのを忘れたり、意図的に「これぐらいの額ならもらわなくていいや」と思ってしまうことが今でもあるので。
よく妻に怒られるのですが・・・
そう考えると、しっかり領収書を取っていたという報道から見るに、税についてルーズではなかったのでは?というのが僕の見解。
あくまで報道の範囲なので、実は僕のようにちょいちょい領収書を取ることを忘れていた可能性も否めないですが。
そして、『無知』という部分。
これまた報道によると、2015年までは納税していたとのこと。
まあ、これも税務署から指摘を受けての納税だったらしいので、指摘されなければ無申告でいこうとしていたということになります。
あと、税制の緩い国や、無税のドバイへの移住などを検討しているような発言をしていた模様。
台本にあったことだったり、特に深く考えずどこかで聞きかじった話をなんとなく喋っただけなのかもしれませんが、こういった発言があった以上、税について完全に無知だったとはとても思えません。
まとめると、、、
ルーズでも無知でもなく、ただ『考え方が極限的に甘い』ということなのだと思います。
悪意はないのかもしれないが、「言われたら払えばいいや」ぐらいの激甘な納税意識しか持っておらず、社会人としてはかなり残念な意識と言わざるを得ません。
好きな芸人さんだっただけに、この点はショックでしたね。
結論 : 悪意は無さそうだが、社会人としては失格
ちなみに、調べていく上で一つ気になったのが以下の記事。
これは、徳井氏の会社「株式会社チューリップ」についての記事です。
同社の事業内容は「テレビ・ラジオ、舞台等の出演」「マネジメント業務」というものから「飲食店の経営及びコンサルタント業」「フランチャイズチェーン店の加盟店に対する市場調査。経営計画」など、芸人活動以外の分野にも及ぶ。
同社は、16~18年の3年間の法人所得約1億円も全く申告していなかった。
将来が不安定な芸能人が節税目的で個人事務所を構えることは多いが、ここまで事業範囲を広げているのは珍しい。ある芸能関係者は「徳井が飲食店をプロデュースしているとは聞いたことがない。登記に飲食店絡みの事業を書くことで、プライベートの飲食を市場調査名目で経費計上していた可能性もある」と話す。
要は、「やってもいない&やる予定もない飲食業なども事業内容として加え、経費の水増しをしようとした」という記事内容ですが、これについては違うと思います。
これは、会社を作ったことがある人は大体分かるのではないでしょうか。
会社設立の際には『定款(ていかん)』という書類を作成する必要があるのですが、この定款に『事業目的』を書くことになっています。
しかしこの定款、、、
何か変更があると、かなり面倒くさいのです。。。
例えば、会社所在地を変更したり、株数を変更したり、事業目的を変更したり。
こういった場合は、法務局への登記申請が必要になってきます。
この作業が実にダルいわけで・・・
会社所在地や株数は、そう簡単に変わるものではないし、変えないようにしようと思えば変えずに済むもの。
しかし事業目的については、いつ「やっぱりこういう事業もやりたい」となるかわかりません。
なので僕も、会社設立時、「もしかしたら将来やるかもしれない事業」についても定款に記載しておきました。
会社設立はすべて僕一人でやったのですが、一応税理士さんに相談くらいはしました。
その際にも、「定款の変更は手間がかかるから、将来やるかもしれない事業については記載しておいた方が良い」と言われましたね。
なので徳井氏の場合も、こういった理由で飲食業を事業内容として定款に記したのだと思われます。
芸人が副業で飲食店を開くのはよくあることなので。
よって、これに関しては経費計上のためではないと思います。
・・・というフォローも入れてみましたが、なんにせよ「3年間の無申告」は本当にシャレになりません。
自営業者として絶対にやってはいけないレベルのこと。
経費申請に慎重になることも当然ですが、とにかく申告漏れだけは絶対にしてはなりません。
これが自営業者の鉄則です。